ニュースレター「契約書英訳で失敗しないコツ」

契約書英訳で失敗しないコツ

お客様が契約書の英訳を依頼される際、普段、日本法人間で使用されている日本語契約書の内容(日本法に準拠しているもの)を、英訳して、英文契約書(海外の特定の国の法律に準拠しなければならないもの)として、そのまま使用される方が、数多くいらっしゃいます。これは、お客様が、日本語契約書が弁護士のチェックの入った完璧なものであれば、英訳すれば、そのまま、英語圏で使用できると考えられることが多いためです。これは、とても危険なことです。日本の契約書を英訳しても、英文の契約書にはなりません。

英語圏の慣習と法律を考慮すると契約書の記載内容は3倍前後になるのが普通です。ちなみに、当然のことですが、オーストラリアとカナダでは同じ英語圏でも国が異なります。したがって、別々の契約書を用意する必要があります。(さらに厳密には……米国であれば州法がありますので、各州向けに、別の契約内容を用意する必要があります)。

これでは、あまりに大変な作業となってしまい、費用も時間もかかります。そこで1種類の契約書で、取引先を変えて安全に使用できる方法を検討されるケースが多いのですが……それでも配慮すべき点が多々あります。

最も作業が簡単でかつお客様(日本法人)にとって有利な方法は「準拠法を日本の法律とし」「合意管轄も日本国内」とすることです。ご存じも方も多いと思いますが……準拠法とは契約書を理解するときに使用する法律であり、合意管轄とはこじれて裁判になったとき、裁判をする裁判所の場所であります。上記の場合、通常の国内の契約書には記載されないことが多い、準拠法の条項を、合意管轄のほかに追記することが必要です。これらは、日本語オリジナルの場合も、英語オリジナルの場合も、日英両方に追加します。正本と翻訳の内容の翻訳の技術レベルでの不一致を回避する為です。

弊社は、日本法に準拠する「物品販売契約書」の「日本語版オリジナル」の英訳(or 英語版オリジナル)で、国内法以外の法律に準拠してしまう可能性を残すことになる「国際司法原則」や「ウィーン条約」の除外を提案しています。相手方がこれで承諾すれば、お客様(日本法人)にとって有利になるからです。(外国法準拠の場合、相手方が日本法人に同様のことを求めてくるのと同じです)。したがって、下記のような条項を日本語と英語版(or英訳)の両方に追加することを「ご依頼者側でご検討」頂いています。

  1. ウィーン条約除外の条項: 国際物品販売契約に関する国連条約は、その全部が、本契約への適用から除外される。
  2. 法の抵触に関する原則の除外: ……日本国の法律に準拠する……ただし、他管轄の法律の適用を必要とするものである抵触法の原則は除外するものとする。

ウィーン条約は「お互いの国の法律までは詳しく分からないから、妥協して、この条約の条項を使いましょう」という考え方です。弊社は、最終判断は、ご依頼者側に委ねています。

又、英語版と日本語版の両方を正本とすることは、お勧めできません。どのように正確に翻訳された契約書も、法的解釈には、微妙な差異がでる危険性があるためです。

もちろん、お客様(日本法人)にとっては、日本語をオリジナル、英訳を日本語理解のための資料とするのが有利です。弊社なら、事前に連絡を頂ければ、英語版オリジナル(日本法準拠、合意管轄も国内)とする作業も承ります。万一、裁判になると費用が余計にかかりますが、もちろん可能です。その場合も、英訳レベルや本文の内容は変わりません。但し、オリジナルをどちらにするかでも体裁が異なってきますので、「日本語オリジナル/英訳版参考資料」で、発注されて、後日、「英語版オリジナル/日本語版参考資料」と変更する場合、その変更作業に、追加料金が必要になります。

いずれの場合も、国際間取引を前提として書かれた翻訳原稿(英文作成用の日本語原稿)の用意が、お客様側で可能な場合を除き、日本語原稿の校閲(訂正・加筆)版と、そ れに対応する英語版の両方を同時に納品しています。英訳版は原則として米国人弁護士に全文を校閲させています。

上記のほかにも注意点は多くありますが……全部を記載するとあまりに長くなるので割愛させて頂きます。尚、弊社では、どのようなお見積りが、お客様にとって最も適しているかのご相談を翻訳コーディネーターが無料でお受けしています。

(注)契約内容に関する弁護士の戦略的なアドバイスではありません。

現在、弁護士事務所へ英訳を依頼されている少数のお客様を除き、多くのお客様が危険な英訳を契約書として利用されていることを正直、大変懸念しています。又、法律事務所の英訳なのに問題がおきて、弊社で、お客様に確認したところ、法律事務所の事務員がインターネットで安い翻訳会社に依頼していたケースもあります。

弊社でも、不安なのであれば、必ず、米国人弁護士のいる国際契約に明るい弁護士事務所にご相談されることをお奨めします。

弊社の英訳と国際弁護士事務所の英訳で異なる点が1点あります。弊社では、日本語も英語もどちらが正本であるかに関係なく、裁判官が理解できるレベルまで校閲しています。この点は、弁護士事務所も弊社も同じです。しかしながら、弁護士事務所では、契約内容の見直しを含む戦略的なアドバイスが可能です。このような助言は、弁護士が直接に、お客様からの業務をお受けした場合の除き、翻訳会社を介して、有料でおこなうと「弁護士法違反」になります。したがって、弊社では業務としては、受け付けていません。(英文校閲の担当弁護士から無料で簡単なアドバイスがつくことはありますが……あくまで作業料金外の好意でのコメントです)戦略面でのアドバイスを重視される場合は、弁護士事務所をご利用くださいますようにお願い申し上げます。

ちなみに、弊社の英訳料金は弁護士事務所の1/3程度に設定してあります。又、契約内容を理解しないで、機械的な逐語訳を提供している翻訳会社と比べると、約10%高い料金ではありますが、経験豊富な翻訳家(弁護士の校閲なしの場合)と比べても、格段に安い価格となっています。……弊社の翻訳価格をどのように考えられるかはお客様のご判断にお任せします。ちなみに、契約書翻訳に限り、数量値引き等はおこなっていません。この点は事前にご了承の程よろしくお願いします。

株式会社ドルフィン 代表取締役 小笠原壽男